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トラサポ通信

トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年3月号~多重下請け是正の動き&ドライバー年間教育12項目⑪健康管理の重要性~

多重下請けの是正と健康管理の重要性

運輸のミカタとトラサポでは、毎月「気になるニュース」と「ドライバー教育道場」と題して、運送業界を取り巻く現状とドライバーの年間教育に役立つ情報を発信していきます。

今月の記事はこちら(運輸のミカタVer.は大幅な加筆修正を行った完全版です)

気になるニュース

多重下請けの実態と運送業界の未来

日本経済新聞にて『トラック運転手が不足する「2024年問題」を巡り、政府が物流関連2法を今国会で改正し、対策に乗り出す。輸送業務の委託を重ねる「多重下請け」を是正するため、元請け業者に取引管理簿の作成を義務づける。』と報道されました。

運送業の多重下請け是正 2024年問題で法改正へ – 日本経済新聞 (nikkei.com)

多重下請構造が実運送事業者の利益を蝕んでいる要因だということです。

 

日本の運送業界は「2024年問題」に直面しています。これは運賃相場の低下と深刻なドライバー不足に直結しています。

この問題の根底にあるのが、多重下請け構造です。多重下請けとは、元請け企業が下請け企業に業務を委託し、その下請け企業がさらに別の企業に業務を委託することを繰り返す構造を指します。「孫請け」「ひ孫請け」「二次受け」「三次受け」「四次受け」とも呼ばれています。
この多重下請けの結果、仕事の最終段階である実運送事業者の利益が著しく減少するという問題が発生しています。利益が減少するとドライバーへの適正な報酬の支払いが困難となり、結果としてドライバー不足を招いてしまいます。すると、利益の減少とドライバー不足を補うために、ひとりのドライバーが長時間運行を強いられることとなり、結果としてコンプライアンスが守られず、ドライバー自身の心身の不調にも繋がってしまい、更にドライバーが辞めるという負のスパイラルが止まらなくなってしまいます。
そのため、この構造は運送業界の持続可能性に対する大きな脅威となっており、解決が急務とされています。多重下請け構造の是正が叫ばれる中、政府は物流関連2法(物流効率化法と一般貨物自動車運送事業法)の改正に乗り出しました。

 

多重下請けの是正への動き

すでに物流関連2法(物流効率化法と一般貨物自動車運送事業法)の改正案は公表されていて、その中では「特定事業者」や「物流統括管理者」という新しい管理構造もできてきます。

「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定 – 国土交通省

具体的な対策として、荷主には「一定規模以上の貨物を扱う企業を『特定事業者』とする」「運転手の負担軽減に向けた計画策定と定期報告を義務化」「『物流統括管理者』の選任を求める」、元請けとなる運送事業者には「委託先の下請け企業名・業務内容などを記した管理簿の作成を義務化」「荷造り・仕分けといった付帯業務料などの契約書への明記を必須化」などが挙げられます。取引管理簿の作成等を義務付けることで、透明性の高い取引の実現可能性が高まり、これにより、下請け企業への適正な報酬の支払いが保証され、運送業界全体の健全な発展が期待されます。さらに、特定事業者や物流統括管理者という新しい制度も導入され、業界の構造改革が進められています。

物流2法の改正案が閣議決定された

現状は閣議決定の段階

各事業者に対する措置の内容

今回の改正は吉と出るか凶と出るか

 

これらの改革は、長期的に見て運送業界の質の向上に寄与し、ドライバー不足問題の解消へと繋がることが期待されていますが、制度が複雑になって関係事業者の負担が増えた結果、実効性がどうなのか甚だ疑問ではあります。
とは言え、国も本気で物流能力を保持しようとしていることは感じます。ぜひこの時流に乗り運賃値上げ交渉を成立させたいものです。

 

運賃値上げ交渉の契機

政府のこれらの取り組みは、運送業界における運賃値上げ交渉の新たな契機となっています。適正な運賃の確保は、ドライバーに対して適切な報酬を支払うための最重要課題と言っても過言ではありません。運賃が上がることで経営が安定化し、ドライバーが長時間運行をする必要が無くなり、休息も適度に取ることができるでしょう。ワークライフバランスが適切なものとなることで、ドライバーの仕事に対する満足度が向上し、業界全体の魅力が高まることが期待されます。
運送業界では長らく低運賃、低賃金の問題が指摘されてきましたが、政府の介入により、荷主や元請けとなる運送会社は適正な運賃を設定することが求められ、結果としてドライバーの待遇改善に繋がると考えられます。運賃の適正化は、ドライバーの仕事の質を向上させるだけでなく、新たな人材の業界への参入を促す可能性もあります。運送業界における健全な競争環境の構築と持続可能な成長のためには、このような運賃値上げ交渉が鍵となります。

 

ドライバー教育道場

運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「健康管理の重要性」についてです。

プロドライバーと呼ばれる職業ドライバーの皆さんの健康管理は、単に個人の問題ではなく、社会全体の安全性や経済活動の継続性にも直結しています。

 

ドライバーの健康リスク

トラック運転手が直面する健康リスクには多岐にわたるものがあります。長時間の運転による肉体的疲労はもちろん、不規則な生活リズムによる睡眠障害、運動不足による生活習慣病のリスク増加などが挙げられます。また、ストレス管理も重要な課題です。これらのリスクが、運転中の事故率の上昇につながります。

 

1. 長時間労働による肉体的疲労
プロドライバーは、長時間運転を強いられることが多く、これが肉体的な疲労を引き起こします。例えば、大型トラックの運転手の労働時間は、全作業平均と比較して20%以上長いとの調査結果があります。そのため運転手は慢性的な疲労に陥りやすく、集中力の低下や反応速度の鈍化を招き、事故のリスクを高めることにつながります。

 

2. 不規則な生活リズムと睡眠障害
長距離運転に伴う夜間労働やシフト制勤務は、不規則な生活リズムを生み出し、睡眠障害の原因となります。睡眠障害は、運転の安全性だけでなく、心血管疾患のリスクをも高めることが知られています。実際、トラック運転手の中には、一般人口と比較して睡眠時無呼吸症候群の発症率が高いとの報告もあります。

 

3. 運動不足による生活習慣病のリスク
運転中の長時間座位姿勢は、運動不足を引き起こし、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。これらの疾患は、治療が長期にわたる可能性が高く、それだけ時間もお金も浪費してしまうことに繋がります。長時間働いて得た給料と少ない休日が、通院や投薬等の治療に充てられてしまったら、こんな虚しいことは無いですよね。

 

4. 精神的な健康問題
交通渋滞、納期のプレッシャー、孤独感など、運転手が経験するストレスは多岐にわたります。また、長時間労働や深夜労働、交通事故を原因とした給与カット等、運送業特有の原因で精神障害を発症するケースがあります。メンタルの不調は注意力の散漫等に直結するため、交通事故の原因となりやすく、特に注意が必要です。

 

花粉症による運転リスク

花粉症の季節は、多くのドライバーにとって厳しい時期です。くしゃみや目のかゆみなどの症状は、運転中の集中力を大きく損なう原因となり、くしゃみをして死傷事故に繋がった事例もあります。

花粉症対策として、早めの薬の服用やマスクの着用が推奨されます。特に、運転前の薬の服用は、症状の軽減に有効であり、運転中の不意のくしゃみや目のかゆみを防ぐことにつながります。市販薬の中には眠くなりにくいものもありますので、自分に合った薬を見つけることが大切です。

 

・舌下免疫療法と長期的な対策
舌下免疫療法は、花粉症の根本的な治療法として注目されています。政府も推奨しているこの治療法は、特定の花粉に対する耐性を身体につけることで、症状を軽減させる効果が期待されます。運転者にとっても、長期的な視点で花粉症対策を考える上で有効な選択肢と言えるでしょう。

 

・マスク着用時の対策
マスクを着用することは、花粉症対策として非常に有効ですが、眼鏡の曇りという問題が生じます。これを防ぐためには、曇り止めを利用することが推奨されます。また、車内の空気を清浄するために、空気清浄機を使用することも一つの方法です。

 

・食生活での対策
ビタミンCの摂取:ビタミンCには、アレルギー反応を抑制する効果があるとされています。柑橘類や緑黄色野菜など、ビタミンCを豊富に含む食品を積極的に取り入れましょう。
バランスの良い食事:免疫機能を正常に保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。特に、腸内環境は免疫に大きく影響するため、ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品などを取り入れ、腸内フローラを整えることが推奨されます。

 

・生活習慣での対策
十分な睡眠とストレス管理:良質な睡眠は、免疫力を維持する上で重要です。また、ストレスはアレルギー反応を悪化させることが知られていますので、日常生活でリラクゼーションの時間を設けることも大切です。

定期的な運動:適度な運動は、体の抵抗力を高め、花粉症の症状を和らげる効果が期待できます。運行中でも、信号待ちで停止したわずかな時間に首を回すなどのストレッチを行うだけでも違いますので、隙間時間を有効活用したり、普段の生活に少しずつ取り入れてみてください。

 

・医療機関での対応
花粉症の症状が出始めたら、速やかに専門医の診断を受けることが大切です。どの花粉に反応しているのかを知るためにも、アレルギー検査を受診してみましょう。
その上で、症状に合わせた抗ヒスタミン薬やステロイド鼻スプレーなどを処方してもらいます。最近では眠くなりにくい薬もありますので、飲み薬をもらうときはお願いしてみてください。

 

・安全運転のための心がけ
運転中に花粉症の症状が出た場合は、無理をせずに速やかに安全な場所に停車し、症状が落ち着くまで待つことが重要です。また、定期的に休憩を取り、症状に配慮した運転計画を立てることが求められます。

 

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