教育 - 運輸のミカタ
トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年4月号~標準約款改正、シン標準運賃告示&ドライバー年間教育12項目⑫安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法~
運輸のミカタとトラサポでは、毎月「気になるニュース」と「ドライバー教育道場」と題して、運送業界を取り巻く現状とドライバーの年間教育に役立つ情報を発信していきます。
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気になるニュース
標準約款の改正
標準約款は荷待ち・荷役作業等の運送以外のサービスの内容が明確化され、「積込み又は取卸し等」が第3章として独立しました。書面交付、利用運送手数料別建て規定、荷主への実運送事業者通知制度なども追加されました。
標準運賃は8%程度アップのものが告示されました。2時間以上の待機時間は5割増など、運賃とそれ以外の対価を別でもらうようになっています。4月1日から改善基準告示で拘束時間等が短くなるので、運賃UP、賃金UP、労働時間短縮で物流を維持していきましょう。
※標準約款に関しては別の記事で詳細な解説を行っておりますので、よろしければそちらもあわせてご確認ください。
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法」についてです。
ASVの技術が発達し、その恩恵にあずかってる人も増えていますが、特性と限界を知っておく必要があります。
ASVとは「Advanced Safety Vehicle」の略で、「先進安全自動車」と訳されます。完全自動運転(レベル4)とまではいかなくとも、車両全体に設置された数多くのカメラやセンサーで車両周囲の環境を監視し続けることで事故の発生を予防したり、発生した事故の影響を軽減するための技術が組み込まれています。また、自動運転技術も組み込まれているため、疲労軽減効果が期待されます。
ASVの主要な機能は以下の通りです。
・衝突回避支援
自動ブレーキや警告システムを用いて、追突事故の被害を軽減または回避することを目的とした先進安全装備です。
衝突が避けられないとシステムが判断した場合には、自動的にブレーキ制御が行われる車種もあります。
・ペダル踏み間違い時加速抑制装置(誤発進抑制制御機能)
車両前方に設置されたセンサーが障害物を認識している状態で誤ってアクセルペダルを踏み込んでしまった場合、警告音でドライバーに踏み間違いを伝えると同時に、アクセルペダルを踏み続けてしまってもエンジン出力を抑え、数秒間、急発進を抑制する先進安全装備です。
・車線逸脱警告(ふらつき注意喚起)
ドライバーが意図せずに車線を逸脱しそうになったときに警告を出すことで、事故を防ぎます。
・リアビークルモニタリングシステム(後側方接近車両注意喚起装置)
自動車にはサイドミラーやバックミラーには映らない死角が斜め後ろに存在します。
走行中、この死角に他の走行車両がいることをドライバーに知らせ、主に車線変更での衝突事故を防ぐことを目的としています。
・運転者状態監視
疲労や注意散漫を感知して警告するシステムで、運転者が安全な状態で運転を続けられるよう支援します。
・夜間視界支援
暗い環境での視認性を向上させるための照明システムや、カメラによる映像補助があります。ロービームとハイビームを自動で切り替える技術もこれに該当しますね。
・歩行者検知・保護
歩行者を検知し、必要に応じて自動でブレーキをかける技術です。
また、ASVに組み込まれる自動運転技術の主な要素は以下の通りです。
・アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)
車両が先行車との安全な距離を保ちながら速度を自動調整するシステムです。
・自動駐車アシスト
駐車スペースへの車両の誘導と操作を自動で行う技術です。
・自動車線維持支援(LKA)
車線内での車両の位置を自動で調整し、車線の逸脱を防ぎます。
ふらつきの注意喚起装置やレーンキープアシスト、衝突回避支援など便利な装置があります。これらにより長距離輸送の疲労は軽減されますが、実際にはその機能を過信して事故を起こしてしまうケースも少なくありません。
実際に、運転席後方の荷物を取ろうと脇見運転となり、前方の渋滞に気付くのが遅れて5台を巻き込む多重事故を起こしてしまい、結果として死亡者も出た事例もあります。衝突回避支援はあくまで「支援」ですのでぶつかることを100%防ぐわけではありません。
また、警報がイチイチうるさいからといって機能を停止してしまうドライバーも少なからずいるようです。
支援機能を過信せず、逆に自分の運転技術も過信することなく、装置の限界や自分の運転特性をしっかりと把握して、目指すは事故ゼロです!
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トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年3月号~多重下請け是正の動き&ドライバー年間教育12項目⑪健康管理の重要性~
運輸のミカタとトラサポでは、毎月「気になるニュース」と「ドライバー教育道場」と題して、運送業界を取り巻く現状とドライバーの年間教育に役立つ情報を発信していきます。
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気になるニュース
多重下請けの実態と運送業界の未来
日本経済新聞にて『トラック運転手が不足する「2024年問題」を巡り、政府が物流関連2法を今国会で改正し、対策に乗り出す。輸送業務の委託を重ねる「多重下請け」を是正するため、元請け業者に取引管理簿の作成を義務づける。』と報道されました。
運送業の多重下請け是正 2024年問題で法改正へ – 日本経済新聞 (nikkei.com)
多重下請構造が実運送事業者の利益を蝕んでいる要因だということです。
日本の運送業界は「2024年問題」に直面しています。これは運賃相場の低下と深刻なドライバー不足に直結しています。
この問題の根底にあるのが、多重下請け構造です。多重下請けとは、元請け企業が下請け企業に業務を委託し、その下請け企業がさらに別の企業に業務を委託することを繰り返す構造を指します。「孫請け」「ひ孫請け」「二次受け」「三次受け」「四次受け」とも呼ばれています。
この多重下請けの結果、仕事の最終段階である実運送事業者の利益が著しく減少するという問題が発生しています。利益が減少するとドライバーへの適正な報酬の支払いが困難となり、結果としてドライバー不足を招いてしまいます。すると、利益の減少とドライバー不足を補うために、ひとりのドライバーが長時間運行を強いられることとなり、結果としてコンプライアンスが守られず、ドライバー自身の心身の不調にも繋がってしまい、更にドライバーが辞めるという負のスパイラルが止まらなくなってしまいます。
そのため、この構造は運送業界の持続可能性に対する大きな脅威となっており、解決が急務とされています。多重下請け構造の是正が叫ばれる中、政府は物流関連2法(物流効率化法と一般貨物自動車運送事業法)の改正に乗り出しました。
多重下請けの是正への動き
すでに物流関連2法(物流効率化法と一般貨物自動車運送事業法)の改正案は公表されていて、その中では「特定事業者」や「物流統括管理者」という新しい管理構造もできてきます。
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定 – 国土交通省
具体的な対策として、荷主には「一定規模以上の貨物を扱う企業を『特定事業者』とする」「運転手の負担軽減に向けた計画策定と定期報告を義務化」「『物流統括管理者』の選任を求める」、元請けとなる運送事業者には「委託先の下請け企業名・業務内容などを記した管理簿の作成を義務化」「荷造り・仕分けといった付帯業務料などの契約書への明記を必須化」などが挙げられます。取引管理簿の作成等を義務付けることで、透明性の高い取引の実現可能性が高まり、これにより、下請け企業への適正な報酬の支払いが保証され、運送業界全体の健全な発展が期待されます。さらに、特定事業者や物流統括管理者という新しい制度も導入され、業界の構造改革が進められています。
これらの改革は、長期的に見て運送業界の質の向上に寄与し、ドライバー不足問題の解消へと繋がることが期待されていますが、制度が複雑になって関係事業者の負担が増えた結果、実効性がどうなのか甚だ疑問ではあります。
とは言え、国も本気で物流能力を保持しようとしていることは感じます。ぜひこの時流に乗り運賃値上げ交渉を成立させたいものです。
運賃値上げ交渉の契機
政府のこれらの取り組みは、運送業界における運賃値上げ交渉の新たな契機となっています。適正な運賃の確保は、ドライバーに対して適切な報酬を支払うための最重要課題と言っても過言ではありません。運賃が上がることで経営が安定化し、ドライバーが長時間運行をする必要が無くなり、休息も適度に取ることができるでしょう。ワークライフバランスが適切なものとなることで、ドライバーの仕事に対する満足度が向上し、業界全体の魅力が高まることが期待されます。
運送業界では長らく低運賃、低賃金の問題が指摘されてきましたが、政府の介入により、荷主や元請けとなる運送会社は適正な運賃を設定することが求められ、結果としてドライバーの待遇改善に繋がると考えられます。運賃の適正化は、ドライバーの仕事の質を向上させるだけでなく、新たな人材の業界への参入を促す可能性もあります。運送業界における健全な競争環境の構築と持続可能な成長のためには、このような運賃値上げ交渉が鍵となります。
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「健康管理の重要性」についてです。
プロドライバーと呼ばれる職業ドライバーの皆さんの健康管理は、単に個人の問題ではなく、社会全体の安全性や経済活動の継続性にも直結しています。
ドライバーの健康リスク
トラック運転手が直面する健康リスクには多岐にわたるものがあります。長時間の運転による肉体的疲労はもちろん、不規則な生活リズムによる睡眠障害、運動不足による生活習慣病のリスク増加などが挙げられます。また、ストレス管理も重要な課題です。これらのリスクが、運転中の事故率の上昇につながります。
1. 長時間労働による肉体的疲労
プロドライバーは、長時間運転を強いられることが多く、これが肉体的な疲労を引き起こします。例えば、大型トラックの運転手の労働時間は、全作業平均と比較して20%以上長いとの調査結果があります。そのため運転手は慢性的な疲労に陥りやすく、集中力の低下や反応速度の鈍化を招き、事故のリスクを高めることにつながります。
2. 不規則な生活リズムと睡眠障害
長距離運転に伴う夜間労働やシフト制勤務は、不規則な生活リズムを生み出し、睡眠障害の原因となります。睡眠障害は、運転の安全性だけでなく、心血管疾患のリスクをも高めることが知られています。実際、トラック運転手の中には、一般人口と比較して睡眠時無呼吸症候群の発症率が高いとの報告もあります。
3. 運動不足による生活習慣病のリスク
運転中の長時間座位姿勢は、運動不足を引き起こし、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。これらの疾患は、治療が長期にわたる可能性が高く、それだけ時間もお金も浪費してしまうことに繋がります。長時間働いて得た給料と少ない休日が、通院や投薬等の治療に充てられてしまったら、こんな虚しいことは無いですよね。
4. 精神的な健康問題
交通渋滞、納期のプレッシャー、孤独感など、運転手が経験するストレスは多岐にわたります。また、長時間労働や深夜労働、交通事故を原因とした給与カット等、運送業特有の原因で精神障害を発症するケースがあります。メンタルの不調は注意力の散漫等に直結するため、交通事故の原因となりやすく、特に注意が必要です。
花粉症による運転リスク
花粉症の季節は、多くのドライバーにとって厳しい時期です。くしゃみや目のかゆみなどの症状は、運転中の集中力を大きく損なう原因となり、くしゃみをして死傷事故に繋がった事例もあります。
花粉症対策として、早めの薬の服用やマスクの着用が推奨されます。特に、運転前の薬の服用は、症状の軽減に有効であり、運転中の不意のくしゃみや目のかゆみを防ぐことにつながります。市販薬の中には眠くなりにくいものもありますので、自分に合った薬を見つけることが大切です。
・舌下免疫療法と長期的な対策
舌下免疫療法は、花粉症の根本的な治療法として注目されています。政府も推奨しているこの治療法は、特定の花粉に対する耐性を身体につけることで、症状を軽減させる効果が期待されます。運転者にとっても、長期的な視点で花粉症対策を考える上で有効な選択肢と言えるでしょう。
・マスク着用時の対策
マスクを着用することは、花粉症対策として非常に有効ですが、眼鏡の曇りという問題が生じます。これを防ぐためには、曇り止めを利用することが推奨されます。また、車内の空気を清浄するために、空気清浄機を使用することも一つの方法です。
・食生活での対策
ビタミンCの摂取:ビタミンCには、アレルギー反応を抑制する効果があるとされています。柑橘類や緑黄色野菜など、ビタミンCを豊富に含む食品を積極的に取り入れましょう。
バランスの良い食事:免疫機能を正常に保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。特に、腸内環境は免疫に大きく影響するため、ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品などを取り入れ、腸内フローラを整えることが推奨されます。
・生活習慣での対策
十分な睡眠とストレス管理:良質な睡眠は、免疫力を維持する上で重要です。また、ストレスはアレルギー反応を悪化させることが知られていますので、日常生活でリラクゼーションの時間を設けることも大切です。
定期的な運動:適度な運動は、体の抵抗力を高め、花粉症の症状を和らげる効果が期待できます。運行中でも、信号待ちで停止したわずかな時間に首を回すなどのストレッチを行うだけでも違いますので、隙間時間を有効活用したり、普段の生活に少しずつ取り入れてみてください。
・医療機関での対応
花粉症の症状が出始めたら、速やかに専門医の診断を受けることが大切です。どの花粉に反応しているのかを知るためにも、アレルギー検査を受診してみましょう。
その上で、症状に合わせた抗ヒスタミン薬やステロイド鼻スプレーなどを処方してもらいます。最近では眠くなりにくい薬もありますので、飲み薬をもらうときはお願いしてみてください。
・安全運転のための心がけ
運転中に花粉症の症状が出た場合は、無理をせずに速やかに安全な場所に停車し、症状が落ち着くまで待つことが重要です。また、定期的に休憩を取り、症状に配慮した運転計画を立てることが求められます。
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トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年2月号~トラックGメン取組結果公表&ドライバー年間教育12項目⑩交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法~
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気になるニュース
1月26日トラックGメンによる「集中監視月間」(昨年11,12月)の取組結果が発表され、貨物自動車運送事業法に基づく初の「勧告」が実施されました。
(参考)国土交通省プレスリリース:令和6年1月26日
悪質な荷主や元請事業者等に対しては「要請」164件(荷主82 件・元請事業者77 件・その他5件)及び「働きかけ」47件(荷主26 件・元請事業者19 件・その他2 件)を実施し、違反原因行為の早急な是正を促しました。
さらに、既に「要請」を実施した荷主等のうち、依然として違反原因行為に係る情報が相当数寄せられた者(荷主1社、元請事業者1社)については、違反原因行為をしないよう「勧告」し、その旨を「公表」しました。
対象業者は製紙大手の王子ホールディングスの子会社である『王子マテリア株式会社』と、宅配大手の『ヤマト運輸株式会社』です。
王子マテリアはトラックからの荷物の積み降ろしの順番(いわゆる「荷待ち」)を長時間にわたって待機するよう要求し、ヤマト運輸は、長時間の荷待ちに加え、過積載運行の指示、契約に含まれない附帯業務の強要やその他の無理な運送依頼を繰り返したにもかかわらず、運賃・料金の不当な据え置きを行っていたとのことです。
長時間の荷待ちはドライバーの拘束時間の長期化の原因であり、2024年問題で荷主と運送会社が一体となって短縮に取り組むべき最重要課題です。これを減らす努力をすべき荷主側が長時間・長期間にわたって荷待ちをさせていたのは由々しき事態ですね。
ヤマト運輸の違反原因行為の内容も悪質です。
過積載運行は車両や道路に与えるダメージが大きいだけでなく、ブレーキが効きにくくなったり、遠心力が大きくなるのでカーブでの転倒、重心が高くなることで横風による転倒等、様々な危険をはらんだとても危ない運行です。これを「たくさん積んで稼ぎたい」という運送会社側の原因でなく、荷主側がさせていたというのだから驚きです。実際に転倒事故等が起きたらどうするつもりだったのでしょうか。
運賃・料金の据え置きも、近年の物価上昇や燃料費や人件費の高騰を鑑みれば、対応すべきなのが荷主の役割であるところ、自分たちが大企業という立場を利用した悪質なものと言わざるを得ません。ここは下請法や独占禁止法も関連してくる部分ですので、中小企業庁や公正取引委員会にもしっかりとアクションを起こしてもらいたいところです。
この2社の違反内容は悪質なものだからこその公表でしたが、私が先日参加した中小企業庁と公正取引委員会が共催のセミナーでは、荷主や元請け事業者がとても関心を持っていたのがとても印象的でした。
トラックGメンの効果は未知数ですが、2024年は業界全体の意識変革の年になるでしょう。
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法」についてです。
運送会社の常時選任運転手の皆さんは、紛れもなく自他共に認めるプロドライバーです。これは異議が出ないはずです。
そのため、事故を起こすことは全く無いと思いますが、とは言えプロドライバーも人間です。毎日心身ともに万全な人ばかりではないでしょう。むしろ日々の長時間勤務によって疲れが溜まっていたり睡眠不足の方も多いのではないでしょうか。プライベートでの悩み事や人間関係が原因のストレスもあるでしょう。
以下は、そんなプライベートでの悩み事による心理的ストレスを抱えたトラックドライバーが起こしてしまった、追突死亡事故の調査結果を国土交通省が公表したものです。
(参考)事業用自動車事故調査委員会の調査報告書の公表について
概要には「家庭の事情による心理的ストレス」とありますが、詳細版を読むと、どうやら離婚協議中であったようで、自宅(持ち家)をどうするか等で悩んでいたとか。
考え事をしているとその分運転に対する集中力が低下するのは火を見るよりも明らかで、前方不注意となっていたのは言うまでもありません。
寝不足では無かったということですが、睡眠の質も落ちていたことでしょう。
また、考え事をしているときは運転姿勢を意識することが無いでしょうから、姿勢も悪いまま長時間運転していたことと思います。
悪い姿勢を続けていたら疲労がたまります。夜間で見えにくいなかでの走行や車線変更や追い越しは緊張感を伴うため精神的疲労も溜まります。
「運転」という作業をするための『認知・判断・操作』はどれも脳が正しく働き指令を出すことが不可欠です。そのためには睡眠と糖分が必須ですね。
どんなに忙しくても急いでいても、疲れを感じていないとしても、予定通りもしくは早め早めに休憩休息を取ること、食事をとることがとても大切です。
睡眠も食事も運動も、すべては安全安心な運行のためですね。
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トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年1月号~価格交渉の指針と支援&ドライバー年間教育12項目⑨運転者の運転適性に応じた安全運転~
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気になるニュース
日本経済新聞で「価格交渉拒否は独禁法違反、公取委が指針 賃上げ促す」という報道がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA289R60Y3A121C2000000/
ついに2024年となりましたが、2024年問題による様々な影響を、国をあげて対策しようと関係省庁が躍起になっており、国土交通省のみならず、公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁などが、網羅的に下請け企業の荷主に対する価格交渉をサポートしています。
特に、中小企業庁は「適正取引支援サイト」というものを作っています(リンクは記事中ほどに貼ってあります)。
そのなかでは、資料の提供のみならず、実際に講義を行っていたり、価格交渉のロールプレイを行っていたりします(受講生同士でロールプレイをします。みなさんそれぞれが社長や営業職なので、かなりリアルなロールプレイになります)。
先日、数あるセミナーのなかからトラック運送業編の基礎編を受講しました。トラック運送業編と言っても基礎編ですので、交渉の基本的なことから体系的に学ぶことができ、自分自身の事務所経営にも役立てることができると感じました。
また、埼玉県などの各地自治体も、独自に様々なツールを公開して提供しています。
特に埼玉県のホームページでは、具体的な数値を表す資料なども公開されており、視覚に訴える交渉を行うツールとして活用できるように感じます。
2024年問題だけでなく、ロシアとウクライナの戦争や急激な円安の影響もあり、連日様々な物価上昇のニュースを目にします。特に燃料費やエネルギー関連費、人件費の高騰が特に大きく、仕入れがほとんど無い貨物自動車運送業界は特にダメージが大きいのではないでしょうか。
ここでは貨物自動車運送事業と関連が深い項目をピックアップしていきます。
(出典はすべて「埼玉県 主要原材料費等の高騰状況」より)
特に燃料費の高騰が凄まじいですね。ガソリンは11.1%、軽油に至っては17.8%も上昇しています。
自動車整備に関する費用は5.1%の上昇。整備士の人件費だけでなく自動車部品代の高騰も影響していると思われます。
電気代は昨年同時期をピークに落ち着いてきましたが、それでも17.2%の上昇です。
人件費は3.7%と率にしては小さく感じますが、ここに社会保険料などの法定福利費が掛かってきますので、実質負担率はさらに大きいと感じます。
いかがでしょうか。
これだけ様々なコスト増が数値化されると、少しくらい値上げしてくれてもいいじゃないかと思うのが普通の感覚だと思います。
ぜひ御社の原価を計算していただき、価格交渉をしていっていただければ幸いです。
最後に、中小企業庁の「適正取引支援サイト」と、埼玉県が公開している各種支援ツールのリンクを貼っておきますので、よかったら参考になさってください。
経済産業省 中小企業庁 適正取引支援サイト (tekitorisupport.go.jp)
価格交渉に役立つ各種支援ツール – 埼玉県 (saitama.lg.jp)
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「運転者の運転適性に応じた安全運転」についてです。
3年に一度、すべてのドライバーに対して一般診断の受診が推奨されています。
義務ではありませんが、毎年の年間教育(まさに今回の項目!)で使用することになりますし、何年も前に受診した初任診断の結果を使い続けるのは、いささか疑問が残りますよね。人間の体と心は刻一刻と変化していますので、できることなら定期的に受診した方がその効果は大きいです。
客観的に自分の特性を見せられるのは耳が痛い反面、翌日から車間距離や一時停止をいつも以上に気にしたりするのは、皆さん経験あるのではないでしょうか。また、運転免許更新の動画も当たり前のことを言っていますが、その帰り道にはいつも以上に安全を意識することでしょう。
一方、運行管理者の方は、診断評価が低いドライバーと面談する場合でも、それを非難してはいけません。ドライバー自身がなにかを気づき、改善方法を共有すればそれでいいのです。
結果を見てこちらからあーだこーだ訴えるのではなく、「なにか気づくことはありますか?」と傾聴の姿勢でドライバー本人に言わせることがとても大切です。
適性診断の受診も社内での教育も、すべては安全安心な運行のためですね。
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トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2023年12月号~2024年問題とライドシェア、ドライバー年間教育12項目⑧危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法~
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気になるニュース
数年前も話題になり立ち消えになったアメリカUber社等によるライドシェア(※)が2024年問題によって再燃しています。まだまだ日本の法制度ではハードルが高く、都心部での導入は特に難しいでしょう。
※アメリカUber社の日本法人が、産学連携機構九州と共同で、平成27年2月に福岡市で「みんなのUber」という名称でライドシェアの実証実験を行いました。
このサービスでは、スマートフォンのアプリで場所を指定すると、近くを走っている参加者が自家用車でタクシーのように目的地まで送り届けてくれるというもので、利用者は無料でサービスを受けることができました。自家用車を提供して送迎した参加者には、データ収集への協力金という名目で、Uber社から報酬が支払われるという仕組みでした。
しかし、このスキームは「道路運送法に抵触する恐れがある」として、国土交通省の行政指導により中止を余儀なくされました。
都心部でも過疎地域でも、「タクシーがつかまらない」という声はよく聞きます。しかし、だからと言って自家用車を使用して二種免許を持たない「素人ドライバー」による送迎を解決策とするのは安易では無いでしょうか。
これは俗に言う「白タク行為」であり、旅客運送業界はもちろんオーバーツーリズムなど他の問題も複合的に絡んでいるので、解決方法をそこに求めるのは視野が狭いと言われても過言ではありません。
一方、過疎地域では本当にタクシーやバスを必要としている人が乗ることができない問題も実際にあります。バスの不採算路線は廃止されていく傾向にあり、公共交通機関に頼ることも難しくなってきている現状を踏まえると、過疎地ではライドシェアが普及していくかもしれません。
『ライドシェア』とは、直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、俗に言う「相乗り」や「配車サービス」のことを指します。自家用車の所有者と自動車で移動したい人を結び付ける手段のことです。
海外ではアメリカのUberや中国のDiDi等によって急速に普及してきており、市場規模は右肩上がりに増加しています。
しかし、日本では事業として(報酬をもらって)行うことが道路運送法第78条で規制されており、一部の場合を除いて行うことができないとされています。
道路運送法第78条
自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
一 災害のため緊急を要するとき。
二 市町村、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。
▼ライドシェアの詳しい解説はこちら
ライドシェアとは何か? 国土交通省|国土交通政策研究所報第65号|2017年夏季
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならないドライバーへの年間教育12項目の内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法」についてです。
みなさんは、子どもの飛び出しについてどの程度注意を払っていますか?
飛び出しは子どもだけじゃない、むしろ高齢者や自転車の方が危ない、という声も聞こえてきそうですが、今回は子どもに焦点を当ててみます。
十分注意しているかと思いますが、子どもは親と一緒にいるときでも全く油断できません。自分が幼稚園児の子どもを連れていると想像しましょう。一緒にいる間、ずっと手を握っていられる自信はありますか?ずっと強く手を握っている親もいるでしょうが、みんながみんなそういうわけでもありません。
手を握っていたとしても、子どもは興味がひかれると信じられない力で急に手を払って車道に飛び出てきます。逆に親と一緒にいる安心感から、そのような行動を取ってしまうこともあるでしょう。
小学生にもなればひとりもしくは友人とだけで行動することが非常に多くなります。入学や進級の緊張感が薄れてしまうのか、月別の死者・重傷者数では5月が最も多くなっています。10月が多いのは、暑さがだいぶ和らいでくる時期ですので、真夏の酷暑で外遊びができない反動で、外出が増えるからかと思われます。
※出典|内閣府「令和2年交通安全白書」
また、時間帯別では、夕方15~18時の時間帯が最も交通事故が多く、危険な時間帯となっています。
以下は、小学生の歩行中の時間帯別死者・重傷者数を表したものです。
※出典|内閣府「令和2年交通安全白書」
このように、小学生の交通事故はハッキリとした傾向が出ますので、その傾向を頭に入れて、その時期・時間帯は特に注意しましょう。
地域・エリアでは、住宅街や公園、学校周辺はもちろん、スーパーや駅、歩道が整備された大通りでも注意が必要です。
特に歩道と車道が分かれている道路、とりわけ片道2車線以上あるような大きい道路では「飛び出しは少ないだろう」と注意力が低下しがちです。そういうときこそ逆に「飛び出してくるかもしれない」という意識を持ち、危険予測をしながらの運転を心がけてください。
もし自分には非が無い事故を起こしてしまった場合、いくらドライブレコーダーや防犯カメラが普及し、その映像を理由に自分の過失割合が少なくなったとしても、事故で子どもをはねてしまったという事実は消えません。苦しさだけが残ります。
どんな道路を走っているときでも、注意に注意を重ねましょう。
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トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2023年11月号~2024年問題と運賃交渉、ドライバー年間教育12項目⑦適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況~
運輸のミカタとトラサポでは、毎月「気になるニュース」と「ドライバー教育道場」と題して、運送業界を取り巻く現状とドライバーの年間教育に役立つ情報を発信していきます。
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気になるニュース
東京都トラック運送事業協同組合連合会(通称:東ト協連)が行った2024年問題への対応状況アンケートにて、「対応済」と答えた運送事業者は、わずか1.9%でした。今年もすでに11月だというのに対応済みの運送事業者は2%未満です。
一方、ドライバー給与のベースアップ(昇給)を「行った」と答えた運送事業者は35.5%と過去最多の割合でした。給料アップは、ドライバー不足に悩む運送業界全体で取り組むべきことだから望ましい結果と言えます。
しかし、無い袖は振れないのが世の常。ドライバーの待遇を改善するためには売上の向上、とりわけ運賃アップができないことにはドライバーの給料アップも望めません。
最低賃金が大きく上がり物価も上がり続ける今が、運賃交渉しやすい最大の好機です。このタイミングを逃さず、しっかりと時流の波に乗って運賃アップを勝ち取りましょう!
他方、2024年問題自体への取り組みへ話を戻すと、大手企業による船や鉄道の活用(モーダルシフト)や中継輸送の取組みが報道発表されますが、中小企業は目の前の仕事にいっぱいいっぱいで、そのような改善余地が少ないのが現状です。
物流業界全体での取り組みが必須ではありますが、中小企業は投資する余裕がありません。こういうところに補助金等を活用してもらいたいところです。
※事業再構築補助金等がありますが、先行投資が必要で中小には使いづらい側面もあります。それでも「2024年問題を乗り切るための施策に取り組みたい!」と前向きな事業者様はぜひご連絡ください。金融機関も巻き込んで一緒に現状を打破しましょう!
別業界(荷主サイド)に目を移してみましょう。一般社団法人日本加工食品卸協会(通称:日食協)では、ラベル貼り・棚入れは「着荷主」の業務と規定しました。
しかし、「作業が減ったから運賃下げるよ」ではまったく意味がありません。運賃やドライバー給料は維持したままで、ドライバーの拘束時間を低減する取り組みがされることが期待されます。
ドライバー教育道場
運送事業者が行わなければならないドライバーへの年間教育12項目の内容を、毎月少しずつ掲載していきます。
今月は「適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況」についてです。
単純な運転技術や身体管理、精神管理なども重要ですが、そもそも「安全な経路を走る」こともとても重要です。到着時間を守るために大通りの渋滞を避けるなどの効率性も大事ですが、通学路や人口密集地を避けることも大切です。
特に大雨や大雪などの異常気象時は要注意です。
大雨の際は、高架下やガード下、アンダーパス(道路の下をくぐる構造になっている立体交差)などの周囲より低い場所は冠水しやすい道路を避けるようにしましょう。冠水路は、一見しただけでは正確な深さが分かりにくいため、「行けるだろう」と思い進入しても思いのほか深く身動きが取れなくなる、なんてことはニュースを見ていても明らかです。洪水のおそれのある河川沿いの道路も同様です。
これから冬になり、雪道を走る方も多いと思います。サマータイヤのまま走るのはもってのほかですが、スタッドレスタイヤに交換しても注意が必要です。
それは、2018年(平成30年)から施行された「チェーン規制」です。
「チェーン規制」とは、大雪時の道路交通の確保を目的とされ、全国13区間(高速道路7区間、一般道路6区間)が対象です。
※対象区間
北陸自動車道(E8) 丸岡IC~加賀IC
北陸自動車道(E8) 木之本IC~今庄IC
上信越自動車道(E18) 信濃町IC~新井PA(上り線)
中央自動車道(E19) 飯田山本IC~園原IC
中央自動車道(E20) 須玉IC~長坂IC
米子自動車道(E73) 湯原IC~江府IC
浜田自動車道(E74) 大朝IC~旭IC
国道112号線(山形県) 月山道路
国道138号線(山梨県・静岡県) 山中湖・須走
国道7号線(新潟県) 大須戸~上大鳥
国道8号線(福井県) 石川県境~坂井市
国道54号線(広島県・島根県) 赤名峠
国道56号線(愛媛県) 鳥坂峠
もしチェーン規制が実施された際は、スタッドレスタイヤでも通行することができず、タイヤチェーンを必ず装着する必要があります。
タイヤチェーンには一般的な金属製の他、樹脂製、ゴム製、布製と様々な種類が出回っておりますが、自動車用品店等で販売されている通常のタイヤチェーンであれば問題ありません。
ただし、薬剤を吹き付けるスプレー対応はチェーン規制の対象外ですので注意してください。
降雪予報が出ている際は無理な運行は避けられるよう、日頃から荷主の理解を得ておくことも大切ですが、どうしても運行しなければならないときは、天気予報や道路情報、規制情報等を常にチェックし、時間に余裕を持った運行を行ってください。
仮にご自身がチェーンも装着して準備万端で運行を開始しても、立ち往生している車列や渋滞に巻き込まれては身の危険も感じることでしょう。
早めのタイヤ交換はもちろん、チェーンもいざというときに装着できるように訓練しておいてください。
最後に、異常気象時は視界が悪く普段以上に集中力を要するため、いざというときの判断力も低下します。日頃のイメージトレーニングが大事ですので、普段から異常気象時の運行のイメージを社内全体で共有しておくようにしましょう。
当社では、年間で12項目を取り扱う社内教育の講師派遣も行っております。
「人前で話すのは苦手」「何をどう伝えればいいか分からない」「上司が話すより外部の人の話の方がちゃんと聞きそう」
こんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
安全な運行のために、力を合わせて取り組んで参りましょう!
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