運輸のミカタ|専門の行政書士が運送業許可から役員法令試験対策までサポート。

5月, 2024 - 運輸のミカタ

シリーズ【運行管理】点呼の実施及びその記録、保存は適正か

点呼の実施及びその記録、保存は適正か

 

運送事業を行う上で絶対に避けて通れない業務のひとつが「点呼」。
ここでは、点呼のやり方、タイミング、記録の付け方などの基本をおさえましょう。

点呼の大前提

 

点呼は、運行管理者等が必ず対面で行うこととされています。
(泊り運行など運行上やむを得ず対面で実施できない場合を除く)

 

点呼の大前提

点呼の基本は【対面】

 

近年、ドライバーの労働時間の長期化問題に関する対応とIT化、デジタル化の時代の潮流を受け、『対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法』というものが複数制定されました(IT点呼等)。これらは対面で行ったに関しては別の記事で詳しく解説しておりますのでそちらをご参照ください。(準備中)

 

参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務に従事しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次の各号に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。
 一 運転者に対しては、酒気帯びの有無
 二 運転者に対しては、疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
 三 道路運送車両法第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検の実施又はその確認
 四 特定自動運行保安員に対しては、特定自動運行事業用自動車による運送を行うために必要な自動運行装置(道路運送車両法第四十一条第一項第二十号に規定する自動運行装置をいう。)の設定の状況に関する確認
2 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務を終了した運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法により点呼を行い、当該業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況について報告を求め、かつ、運転者に対しては酒気帯びの有無について確認を行わなければならない。この場合において、当該運転者等が他の運転者等と交替した場合にあっては、当該運転者等が交替した運転者等に対して行った第三条の二第四項第四号又は第十七条第四号の規定による通告についても報告を求めなければならない。
3 (省略)
4 (省略)
5 (省略)

 

点呼の種類~タイミング~

 

点呼の種類

点呼はタイミングによって3つに分類される

 

1.業務前点呼

 

業務開始前に行う点呼のこと。
具体的には『車両の日常点検 → 点呼 → 運行開始』の流れになるので注意が必要。
泊り運行等で遠隔地での業務開始で無い場合は必ず対面で行うこと。
点呼記録簿への記載事項は以下の通り。

 ① 点呼執行者名
 ② 運転者等の氏名
 ③ 運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
 ④ 点呼日時
 ⑤ 点呼方法
  イ.アルコール検知器の使用の有無
  ロ.対面でない場合は具体的方法
 ⑥ 運転者の酒気帯びの有無
 ⑦ 運転者の疾病、疲労、睡眠不足等の状況
 ⑧ 日常点検の状況
 ⑨ 指示事項
 ⑩ その他必要な事項

 

2.業務後点呼

業務終了時に行う点呼のこと。
泊り運行等で遠隔地での業務終了で無い場合は必ず対面で行うこと。
点呼記録簿への記載事項は以下の通り。

 ① 点呼執行者名
 ② 運転者等の氏名
 ③ 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
 ④ 点呼日時
 ⑤ 点呼方法
  イ.アルコール検知器の使用の有無
  ロ.対面でない場合は具体的方法
 ⑥ 自動車、道路及び運行の状況
 ⑦ 交替運転者等に対する通告
 ⑧ 運転者の酒気帯びの有無
 ⑨ その他必要な事項

 

3.中間点呼

 

2泊3日以上の泊り運行や、分割休息を活用する際など、業務の前後どちらも対面で点呼を行えないときは、その業務の途中でこの中間点呼を行うこととされています。確認事項は「酒気帯びの有無」「疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無」の2点で、これに加えて運行の安全を確保するために必要な指示をすることとされています。

※要注意ポイント!
業務前後いずれかで対面点呼ができないとき(1泊2日運行)に中間点呼が必要だと認識している方がいらっしゃいますが、それは誤りです。中間点呼はやらなくて大丈夫です!
また、1泊2日運行での初日の業務後点呼や2日目の業務前点呼を中間点呼と呼ぶ方がおりますが、これも誤りです。中間点呼はあくまでも業務の途中で行う点呼のことを指します。電話点呼=中間点呼ではありませんので、こちらもご注意ください。

 

点呼記録簿への記載事項は以下の通りです。

 ① 点呼執行者名
 ② 運転者等の氏名
 ③ 運転者等が従事している運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
 ④ 点呼日時
 ⑤ 点呼方法
  イ.アルコール検知器の使用の有無
  ロ.具体的方法
 ⑥ 運転者の酒気帯びの有無
 ⑦ 運転者の疾病、疲労、睡眠不足等の状況
 ⑧ 指示事項
 ⑨ その他必要な事項

 

参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則
第7条
3 貨物自動車運送事業者は、前二項に規定する点呼のいずれも対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法で行うことができない業務を行う運転者等に対し、当該点呼のほかに、当該業務の途中において少なくとも一回対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(当該方法により点呼を行うことが困難である場合にあっては、電話その他の方法)により点呼を行い、第一項第一号及び第二号に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。

 

対面点呼の種類

 

対面点呼の種類

特殊な点呼は大きく分けると4つに分類される

 

冒頭、『対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法』が複数あると書きました。これが『IT点呼』『遠隔点呼』『業務後自動点呼』『受委託点呼』です。『受委託点呼』は正確には対面点呼を行っているのですが、ここでは特殊な点呼として列挙しておきます。
(それぞれの詳細は別記事「シリーズ【運行管理の高度化】IT点呼、遠隔点呼、自動点呼の違い」等をご覧ください)(準備中)

 

まとめ

 

点呼は、運行管理業務の要と言っても過言ではありません。
点呼をしないことでドライバーの体調の変化に気付けず、飲酒運転や居眠り運転、それに伴う事故を招いてしまった事業者を数多く見てきました。そのほとんどに監査が入り、車両の使用停止等の行政処分を甘んじて受けています。

 

法律で決まっているから仕方なくやるものではありません。
すべては事業法制定の目的でもある「輸送の安全を確保する」「貨物自動車運送事業の健全な発達を図る」「公共の福祉の増進に資する」ためです。

 

安全無くして発展も社会貢献もありません。
そのための第一歩として、点呼は正しく行いましょう。

 

本日もご安全に!

 

まずはお気軽にお問合せください!

役員法令試験当日に配布される条文集が新しくなりました!

役員法令試験条文集令和6年4月25日更新版役員法令試験 関係条文集の令和6年4月度版が公開されました

令和6年4月、関東運輸局のホームページに新しい条文集が公開されました(条文集のダウンロードリンクは下部にございます)。

 

関東運輸局管内(埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県)の事業者様は、新規許可申請後の役員法令試験は関東運輸局(神奈川県横浜市)にて受験することとなります。

 

令和6年5月29日の役員法令試験以降、こちらの条文集が当日配布されますので、勉強される際はこちらをご利用ください。

 

細かい変更はたくさんありますが、大きな変更点は、やはり令和6年4月から施行された新しい自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称:改善基準告示)でしょう。

改善基準告示の変更点は様々ですが、例えば、一か月の拘束時間の上限は293時間から284時間に、一年の拘束時間上限は3516時間から3300時間に、いずれも短縮されています。

運行管理者の資格試験ではないので計算問題等は出題されませんが、概要(数字)程度は覚えておくべきでしょう。

改善基準告示に関しては厚生労働省がポイントをまとめてくれていますので、ぜひ参考にしてください。

(ダウンロードリンクは下部にございます)

 

試験問題及び回答は条文集に書いてあるとはいえ、事前に対策をしない限り、当日配布されても使いこなすことは不可能です。

 

当社の役員法令試験対策講義では、実際に当日配布される条文集の使い方等もレクチャーします。

 

オリジナルテキストと過去問を使いながら、条文集の使い方もマスターしていただきますので、当日慌てることなく受験することができるのは大きなアドバンテージです。

 

元学習塾講師、都立中学校教育支援事業講師、大学や不動産会社での宅建試験対策講義講師を歴任した行政書士が直々に伝授します。

 

役員法令試験に関しての詳しい記事はこちら

 

受験が決まっているけどどうやって勉強したらいいか分からないという方は、ぜひ一度ご受講ください。

 

 

まずはお気軽にお問合せください!

 

 

改善基準告示改正のポイント

改善基準改正のポイントはこちら

役員法令試験条文集令和6年4月25日更新版

役員法令試験条文集令和6年4月25日更新版のダウンロードはこちら

トラサポ通信(運輸のミカタVer.):2024年5月号~輸送安全規則の解釈運用の改正&ドライバー年間教育12項目①事業用自動車を運転する場合の心構え~

対面点呼の要件緩和

 

運輸のミカタとトラサポでは、毎月「気になるニュース」と「ドライバー教育道場」と題して、運送業界を取り巻く現状とドライバーの年間教育に役立つ情報を発信していきます。

今月の記事はこちら(運輸のミカタVer.は大幅な加筆修正を行った完全版です)

    

気になるニュース

「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」の改正

「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」がの改正版が令和6年3月29日に発出されました。
主な変更点は、対面点呼に関する項目(対面点呼の要件緩和)です。

1.少人数で行っている霊きゅう限定事業者や軽貨物事業者の対面点呼に関して

従来の制度では対面点呼が必須(ドライバーの他にもうひとり必要=最低二人)だったのが、今後はドライバー自らが対面点呼の内容を確認して記録することで対面点呼を行ったものとみなします。今回の改正で、これまで事実上不可能だった一人での事業運営も可能となりました。

※注意:一般貨物自動車運送事業者や特定貨物自動車運送事業者は、許可取得段階で複数名いる(対面点呼ができる運行管理体制が整っている)ため、今回の改正内容は無関係です。ドライバー自らが対面点呼の内容を行っても対面点呼とみなされません。

(参考条文)
第7条 点呼等
1.第1項、第2項及び第3項関係
(1),(2) 省略
(3) 「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法」とは、以下をいう。
・ 一人で事業を行っている場合は、アルコール検知器を使った酒気帯び有無の確認や車両の日常点検等、第7条各号で定める事項を自ら確認し、運行の可否を判断する方法

 

2.遠隔点呼、業務後自動点呼を行う際の要件緩和

従来の制度では、点呼実施場所(ドライバー側)の天井に監視カメラを備える必要がありましたが、今回の改正で、天井に監視カメラを備えることができない場合は、ドライバーがアルコールチェッカーを使用する際、ドライバーの全身や周囲を運行管理者が確認できるならスマートフォンのカメラ機能やドライブレコーダー、ノートパソコン内蔵カメラ等でも代用可能となりました。

元々、監視カメラ設置要件はアルコールチェック時のなりすましや不正防止のためでした。そのため「アルコールチェッカー使用時の」ドライバーや周囲の様子が確認できれば、必ずしも監視カメラである必要は無いということですね。

(参考条文)
(9) 遠隔点呼の実施に係る留意事項
点呼告示第6条第2号においてビデオカメラその他の撮影機器による確認を求めているのは、なりすまし、アルコール検知器の不正使用及び所定の場所以外での遠隔点呼の実施を防止する趣旨であることから、遠隔点呼実施場所の天井に監視カメラを備える等の対応ができない場合は、運行管理者等が、アルコール検知器使用時に運転者等の全身やその周囲を随時、明瞭に確認できれば、クラウド型ドライブレコーダー、ノートパソコンに内蔵されているWebカメラ、スマートフォン等を使用しても差し支えない。
(11) 業務後自動点呼の実施に係る留意事項
点呼告示第10条においてビデオカメラその他の撮影機器による確認を求めているのは、なりすまし、アルコール検知器の不正使用及び所定の場所以外での業務後自動点呼の実施を防止する趣旨であることから、業務後自動点呼実施場所の天井に監視カメラを備える等の対応ができない場合は、運行管理者等が、業務後自動点呼機器操作時の様子及びアルコール検知器使用時の運転者等の全身やその周囲を業務後自動点呼実施中又は終了後に明瞭に確認できれば、ドライブレコーダー、ノートパソコンに内蔵されているWebカメラ、スマートフォン等を使用しても差し支えない。

※補足

なお、遠隔点呼の環境要件としては「照度要件(明るさ)」もあります。暗かったら映像が見えないので当然ですね。

以前あった「遠隔点呼実施要領」(令和3年12月)では『被遠隔点呼実施営業所等の運転者の顔とカメラの間の照度は500 ルクス程度が望ましい。』として、具体的な数値が示されていましたが、これに代わった「点呼告示」では『随時明瞭に確認できる環境照度が確保されていること。』と具体的な数値は示されておりません。これに関しては別途「遠隔点呼及び自動点呼の告示改正に関するポイント」というQ&Aのなかで『具体的な定量基準は設けていません。遠隔点呼を実施する際に、運行管理者等が運転者の状況を随時明瞭に確認できるように環境照度を設定してください。』とされていますので、500ルクスを多少下回ったとしても、それを理由に遠隔点呼が行えないとはなりません。

ちなみに、労働安全衛生法では、事務所における一般的な事務作業を行う場合は300ルクス以上を求めており、実際の300ルクスは「少し暗い」と感じる程度です。通常の事務所の明るさであれば300~500ルクスは常時確保されていると言えますが、実際に遠隔点呼や業務後自動点呼を始める際は、照度計を使用して明るさを測ってみましょう。

 

3.遠隔点呼、業務後自動点呼を行った際の点呼記録簿への記載事項の追加

新しい点呼告示では、遠隔点呼を行える場所として以下の場所が追加されました

「運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車内、待合所、宿泊施設その他これらに類する場所」

この改正に伴い、点呼記録は「運転者等が点呼を受けた場所」という項目が追加されるとともに、輸送安全規則の解釈運用には、その記録の書き方が具体的に示されました。

(参考条文)
第7条 点呼等
3.第5項関係
(4) 点呼告示に基づく点呼等の記録等につき、運転者等が点呼を受ける場所としてあらかじめ定めた場所として、以下のとおり記録するよう指導すること。
(例)○○県××市 △△(実施地点概要:車内、宿泊施設名等)

 

その他の改正点は表現の変更や改善基準告示の改正に伴う拘束時間の変更(16時間→15時間)等、実務に直接影響を及ぼすような内容ではないので割愛します。

また、同日に発出された「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(通称:『点呼告示』)に関する内容は別途まとめますので今しばらくお待ちください。

 

ドライバー教育道場

事業用自動車を運転する場合の心構え

運送事業者が行わなければならない年間12項目の教育内容を、毎月少しずつ掲載していきます。

今月は「事業用自動車を運転する場合の心構え」についてです。

 

運転マナーの基本は「思いやり」と「譲り合い」です。

発荷主や配車係の要求に応えるべく、着荷主のところへ一秒でも早く到着したい!と思いながらハンドルを握っているドライバーの方もいらっしゃることでしょう。ですがちょっと待ってください。

みなさんは普段からトラックを走らせていて、一般の方より遥かに経験値が高い、いわば「プロドライバー」です。普段から社内でも運送事業や運転に関する教育を受け、多少急いだところで到着時刻にほとんど変わりが無いことや、事故や違反をした際の多大なる影響を知らない方はいらっしゃらないでしょう。

また、周囲を走っている乗用車のドライバーは逆にプロではない方々。週末や連休ともなれば「サンデードライバー」「ペーパードライバー」も増えます。慣れない土地でまごつくこともあるでしょうし、浮かれた気分で気が緩んだ運転をすることもあるでしょう。

皆さんが運んでいる物は荷主から預かった大事な大事な商品たち。急な割込み等への対応でブレーキを踏まされるとついイラっとしてしまうこともあるでしょう。でもそんなときだからこそ運転のプロとして対応しましょう。あおり運転はもってのほかですが、そのつもりがなくてもトラックはその大きさから威嚇的に捉えられてしまいがちで、あおり運転と感じられてしまうこともあります。急な割込みや急ブレーキにも対応すべく、普段から十分な車間距離を保ちましょう。

 

今年のゴールデンウィーク後半は4連休で、人手も昨年以上に活況となるようです。各地高速道路の渋滞予測も激しくなることが予想されています。一般ドライバーへの思いやりをいつも以上に持ち、通行車両たちの調整弁になるような運転を心掛けたいものですね。

(車両には会社名がプリントされていますので、会社の代表と思っての行動も心掛けましょう)

 

本日もご安全に!

 

まずはお気軽にお問合せください!

記事カテゴリー
月別バックナンバー
お気軽にお問合せ下さい。 料金表 よくあるご質問

ご挨拶

当社について

運輸のミカタ|運送業専門の行政書士サービス。運送会社に必要な全ての申請業務に対応。

ページTOPへ